
無口な匠
良いモノは、良き使い手と良き作り手が出会って生まれる
私たち人間は、普段の生活の中で様々な身の回りのモノと接しながら生きています。大きいものでは住宅あるいはビルといった建築物から小さいものでは腕時計及びケイタイ等々。一日の中でどれだけのモノと接しているか考えたことがありますか?そして、それら多くのモノに接するとき誰だって「気持ち良くて、さらには心を豊にさせてくれる」といった期待を少なからず持っているはずです。その期待に100%こたえてくれるモノが、使う人にとっての「良いモノ」になるわけです。また、そういった使う側の期待あるいは願望は、反対にモノを作り出す側にとっては最も重要なテーマとなっていることは明らかです。それは、たとえマスプロによって生み出されたモノであろうと、ハンドメイドによって作られたモノだろうと同じです。
このようにモノ作りの原点あるいは発想の出発点には必ず「使う側(ユーザー)のメンタルな要素」が必ず盛り込まれ、結果的に機能や性能といったハード面での要素が加えられてひとつの完成されたモノが生まれるのです。言い換えれば、「良いモノとは、良き使い手と良き作り手の出会い」によって生まれるということが言えると思います。いずれにしても、良いクラフトマンシップはこうした良い環境で育まれていくものなのかもしれません。
ところで、私たち日本人の手先の器用さは世界的にもトップクラスといわれております。それが今日の繁栄をもたらした大きな要因になっていることはあらためて言うまでもありません。
また、わが国には古くから建築、工芸、料理等に極めて秀でた技術や感性を持っている仕事の達人がいます。それが「匠」と呼ばれている人たちです。ヨーロッパにおけるマイスターと同じといっていいでしょう。今日のように工業社会として発展してもなお匠と呼ばれる人たちの仕事は様々なジャンルで確実に息づいています。
私たち「バイクハウスABE」もサイドカー作りといったきわめてマイナーなジャンルでのプロダクツではありますが、創業以来、30年以上の長年にわたってできる限り良いモノ作りを目指して日夜喧々諤々と製作活動を続けております。
サイドカーは、ご存知のようにオートバイの持つ軽快な機動性とクルマの持つ快適な居住性を融合させた独特の乗り味が特長です。つまり「オートバイでもなく、クルマでもない」わけですから、それゆえサイドカーユーザーあるいはサイドカーに関心を持っている方々はオートバイユーザーよりもさらに「好奇心旺盛な人」ではないでしょうか。また、別な見方をすれば「より高い理想の持ち主」ということも言えると思います。
したがって、サイドカーを作る側から言わせていただくと
「良き使い手として、相手に取って不足なし」と言えるのです。
※この記事は2005年に書かれました。
サイドカーの可能性に賭ける匠たち
野村友邦(41)
ファイバー製作
越智修三(69)
シート製作(越智商会代表)
遠山勝弘(37)
ペイント製作
大野平三郎(39)
メカニック
阿部恭輔(27)
メカニック
ライター:松島健二/まつしまけんじ
昭和17年東京生まれ
工業高校建築科及び桑沢デザイン研究所卒
ヤマハ、ヨシムラ等の広告制作に従事、別冊モーターサイクリスト及びBMW BIKES誌にて連載担当
81年型BMW R100RS所有
長野県在住








